『存在の耐えらない軽さ』とは、
チェコの作家ミラン・クンデラのプラハの春をモチーフにしたスタイリッシュな恋愛小説です。
武雄の図書館。スタバのコーヒー。
最高にスタイリッシュなロケーションで行われたさがすたいるのクロストークを聞きながら、頭に浮かんだのは、
何故か全く関係のない『存在の耐えられない軽さ』のニーチェの永劫回帰を引き合いにした重さと軽さの話。
人生の軽さと重さの比重の中で、どうやってバランスを取りつつ、進んでゆくか、そんなことでした。
さがすたいるとは、佐賀県が主催する障害のある人や子どもや高齢者に優しい社会を作るムーブメントです。
今回、そのさがすたいるのクロストークが武雄の図書館で行われ、
東京から、ソーシャルデザインをテーマにしたウェブマガジン、greensの小野裕之さん、
発達障害ナビLITALICOの編集長鈴木悠平さん、
子どもの遊びと学びのサイトHoiCleの代表雨宮みなみさんがいらっしゃり、クロストークを行われました。
東京からいらっしゃったこの方々には、地方の現場で重さを孕む私が失いつつある、、笑、
軽やかさ、明晰さ、行動力があり、
社会や人に気持ちのいいことをする、それを当たり前に行う清々しい気持ちのよさがありました。
もしよかったら、
greensのHPを開いてみてください。
老人ホームのおばあちゃんに、生きがいを感じてもらうための編み物の仕事を作ることや、
戦争や貧困についての本についての真面目な記事。
都市から出て、畑を耕し、地域をもっと元気にするための様々な取り組みなど、
様々な、社会的でありながら面白い記事が沢山載っています。
あ、こういうムーブメントが若い世代の中でこんなに活発に行われているんだ、、
みんな、少しずつ、今の世の中に疑問を持ち、まじめに物事を考え、行動しているんだ、、
そしてそれをスタイリッシュに発信しているんだ、、
ということを知り、勇気をもらう気がします。
そしてHoicleの雨宮さんの、子どもたちに創造的な遊びを提供するお話では、
悪 とされていることが、本当は、子どもの発達にとってとても大切なことなんだということを知り、
一緒にわくわくと楽しんでみたいなとうことを改めて思い出させてくださいました。
固いイメージもある行政の主催で、
こんなに先進的でスタイリッシュで柔軟なメンバーでクロストークを行うって県ってなかなかないことではないのかな、、、と
面白い県に住んでいるんだなと、少しワクワクしました。
時折、参加者は周囲の方々とグループディスカッションを行うのですが、
会場で、伴に話し合ったり、意見を述べる参加者の方々は、沢山の市井の人たち。
医学部の学生さん。車いすの青年。美容サロンのオーナー、映画館の方、
アートの方、、。
障害や福祉関係の方に限らない多彩な人々です。
これは、とても珍しいことですが、素晴らしいことだと思いました。
何故かというと、障害に係わっていない人々の意識が変わらない限り、社会はなかなか変わらないけれど、
現実に、その「社会」の中で、沢山の障害のある人たちが生きているからです。
職業や年齢の垣根を超えて、伴にディスカッションし、
住んでいる社会を変えてゆこうという動き自体が、
より豊かな社会をみんなで作ることになるのでしょう。
そして、
アサヒ薬局で、日々発達障害など自閉スペクトラムの子どもたちやお母さんと接する私が、一番知りたいこと、
いつもいつもお母さんたちから相談されることが、発達障害のこどもたちの未来のこと、就労のことです。
なので、さがすたいるのクロストークで、発達障害の就労を支援しているLITALICOさんのお話を聞けて、
棚ぼたってこんなことを言うのかしら!とびっくりするくらい、知りたい情報に触れることができました。
どこの放課後デイがいいのかや、支援学校と支援級どちらを選べばいいのかなど、
お母さんたちから日々聞かれることの実体験が、LITALICOさんの発達ナビには網羅されていました。
また、私がアサヒ薬局で、ずっと感じていたことは、一人、一人に物語があるということでしたが、
大きな動きの中に、忘れてはならない一人一人がいること。
細部に眼を向けるその姿勢に、共感を感じました。
私がアサヒ薬局でもみなさんに紹介している本に、べてるの家という精神障害者の会社の『悩む力』があります。
今まで隠していた、治すべきものとされていた精神症状をユーモラスにオープンにし、社会で生きてゆく、
障害のある家族を抱えた私の人生を変えた本でしたが、
LITALICOさんでは、べてるの家のメンバーや向地さんをお呼びして、お話会をなさったりしているそうなのです。
そのLITALICOさんの鈴木さんのお話で、心にひっかかったのは、
もしも、かっこいい義手があれば、手がないのがハンデキャップとならないように、
障害は社会が変われば、つまり、障害に代換えするような配慮や機能があれば、障害じゃなくなるという話でした。
クロストークの質問の中で、発達障害のお子さまをお持ちの保護者さまが意見を述べられました。
発達障害のこどもは二つのことを同時に行う脳の機能に障害があるから、「書く」という行為がとても苦手です。
なので、学校で子どもにタブレットを使わせてほしいが、学校と個別交渉という形になってしまう。
不登校の障害を持った子どもの世話だけでも大変なのに、個別交渉をする暇もない。
どうしたらいいのだろうか、、。
私自身は同じような相談を毎日のように受けているので、よくわかりました。
障害に配慮する仕組みを、現状では、お母さん一人一人が、学校と話しあわれますが、なかなか解決しないで、
障害を持った子供の育児だけで四苦八苦のお母さんが精神的に追い込まれてしまうという現状があるのです。
どうせ辛いのが現実だから、辛さを流せる力を養ってほしいと沢山のお母さんに言われて、
それはその子が変わるべきなのか、、社会が変わるべきなのか、、、私はよく返す言葉を失います。
そしてまた学校の先生たちも大変な業務の中、日々頑張られていて、
工夫したくてもなかなか変えられない構造上の問題もあります。
なので、その答えは、私もとても知りたいことでした。
その時、クロストークのメンバー方が答えられたことが、課題をオープンに外に出して、
外の人も巻き込みながら、徐々に理解を深め、変えてゆくということでした。
繰り返し、「対立構造にしないこと」、とおっしゃられました。
当時者の敷居が高く頑なだと、余計に大変になる。
でも、外の人間も緩やかに巻き込みながら、少しずつ、問題を発信してゆくと、社会が変わってゆくと。
その対話を聞きながら、思い出していたのが、冒頭に書いた、実は全く関係ないような、
チェコの民主化運動プラハの春をモチーフにした小説の軽さと重さの話。
重い現実と軽やかさの狭間で、どう動いてゆくか、それが、自閉スペクトラムをはじめ、
種々の障害を巡るムーブメントを作る鍵のような気がしました。
そしてそのためにはみんなで話し合う必要があって、、、。
だから、こんな風に重さと軽さのマージナルな場所でイベントが始まったことは、とてもありがたいことで、
きっとすごくいい流れが、今動き始めようとしているんだろう、、と。
その萌芽の会だったのだろうなと思いました。
そして、、、
このお三方、アサヒ薬局に翌日いらしてくださったのです。
アサヒ薬局では、はーとあーと倶楽部の原画展があっているので、
はーとあーと倶楽部のお母さまたちと、アサヒ薬局のメンバー、行政の方々を交えて、座談会が行われたのでした。
Ricoちゃんのアクセサリーがお迎えしてくれました。
ありがとう。Ricoちゃん。
そして、武雄のクロストークが終わり、ほっとされた面々の少し砕けた座談会では、
はーとあーと倶楽部のお母さまや、クロストークのメンバーの方々から
沢山のお話を聞かせていただきました。
はーとあーと倶楽部とは、金立特別支援学校の卒業生の保護者を中心にした
アートグループで、月に一度、障害のある子どもたちと一緒に、
創作活動をなさっています。
(アサヒ薬局でも以前その様子を記事にしていますので、記事を覗いてみてください
本当に素敵な方々のわくわくに満ち溢れた場所です。)
障害のあるお子さんをお持ちの松尾さんが、そこで、私は今本当に幸せだとおっしゃられました。
さちさんと一緒に、その長い道のりを歩いてきた松尾さん。
その先に、こんなに幸せな未来が待っているのだと、
感じることができたのは、沢山の障害とつきあいたての若いお母さん達と歩いている私にとって勇気をもらう言葉でした。
松尾さんはさちさんが小さい時は、偏見や差別にもおあいになったとおっしゃられていました。
でも隠すことなんかない、とどこにでもさちさんを連れて行った松尾さん。
辛いことがあったからこそ、障害のあるさちさんと伴に、本当に信頼できる温かな方々に沢山出会われてきたのでしょう。
。
障害と言うことはやはり、様々な困難がつきまとうけれど、でも、それでも
それゆえに、沢山の温かい人との出会いもあるし、もちろん涙もあるけれど、沢山の笑いも待っているし、
きっと佐賀には、
松尾さんにこの言葉を言わせる、支援者の方々が沢山いて、素晴らしいめぐり合いも
素晴らしい日々も待っているのだと思いました。
松尾さんのこの言葉は、きっと障害とつきあいたてのお母さんたちに希望を与えると思うのです。
今はまだ、トンネルの入り口に立っていたり、トンネルの最中にいる若いお母さんたち。
トンネルの先は思いのほか、花々が咲く笑いに満ちた場所でした。
そしてまた、胸を打たれたお話がもう一つありました。
松尾さんたち、支援学校のお母さまたちが、どうじてこんなに仲が良いのかというお話です。
様々な病気を抱えた支援学校には待機室という部屋があり、
子どもに万が一のことがあったら、すぐ駆けつけることができるように、
特に重い病気を抱えた子どもたちのお母さまたちはその部屋で待機していたのだそうです。
母親は、子どものことが大好きです。
その子どもに何かあったらと、部屋で待つ時間。
そんな困難の中で伴に過ごしてきたから、心から、お互いのことを思い合っているのだと気づいた時、
はーとあーと倶楽部のお母さまたちの輝きの意味を知った気がしました。
無事、座談会が終わり、、、。
このクロストークと座談会という一連の流れの中で、
私は一組の親子のことをずっと考えていました。
自閉スペクトラムの姉妹を置いてすでに亡くなったお父さまや、一人で子どもたちを育てているおかあさまのこと。
そして、女の子のとびきりかわいい柔らかな笑顔。
どうかその笑顔が守られますようにと、思っただろうお父さまの想い。
凪いだ海を思わせる名前をお父さまは彼女に残されましたが、
沢山考えることがあったから、それを静かに整理したくて、私は、座談会が終わった週末
彼女たちの海に行き、ずっと海をみていました。
ここのところ、アサヒ薬局でも、頑張りすぎた親御さんが倒れる、、、そんなことが時々あり、、
やるせなさが胸をぐっとしめつけました。
様々な想いが寄せてくるけれど、海はただ、喧騒を洗い去り、柔らかな自由を教えてくれる。
そんな海のような柔らかな光が、沢山の親子を取り巻きますように。
お母さまが、ほっとできるように、社会が変わる、そんな流れが、産まれますように。
沢山のそんな親子が、光の中で、優しく暮らせますように。
社会が変われば障害じゃなくなる、、、。
そんな日々が待っていますように。
そしてそして、楽しいおまけの文章です。
最後に、座談会を飾ってくれたはーとあーと倶楽部のツリーができるまでをご紹介!!!
なんで、この人たちはこんなに魅力的なんでしょう。
なんでこんなにぴかぴか光ってるんでしょう???
あうたび、好きになる。
優しくて困り顔の溝口さんに、本当のアーティストのNくんに、
お茶目な笑いを巻き起こすさっちゃんに。
森の中のかたくりの白い花のようなHさん。
こんな風に笑いさざめく明るい場所へ、
沢山の親子が
たどり着きますように、、。
Happy new Year!!