晴れた青い空に風が抜けてゆく。
大きな楠の葉がさわさわと風に揺れる。
古い校舎跡は、子どもたちが遊んでいた余韻を残し、
不思議な秘密基地のようだ。
下駄箱。廊下。 光だけが揺れる。
そして
校舎跡地の一室から聞こえる笑い声。
クリスマスの妖精たちのように、明るい光に満ちた笑い声。
はーとあーとのメンバーが集まって、来年のカレンダーを作っているのだ。
思い思いに、個性的に。
でも、決して一人、じゃない。ゆるやかに繋がりながら。
はるかちゃんは大島君を、車いすでからかいながら、
西村君と馬場はははきはきと、今から描く絵の決意表明をする。
大きな楽器ができて、そこから明るい音楽が流れるよう。
こちらでは、太陽ができてゆく。
幾つもの鮮やかな線を放ちながら。
私たちが失った、世界との対話方法を、世界の声を聴く力を、
彼らは持っている気がする。
この子たちが持つユーモアと優しさは、
きっと彼らを見守ってきたお母さんたちの愛と勇気にあるのだろう。
ここまで一生懸命育ててきて、こんな風に素敵な彼らになった。
彼らが、彼ららしく、過ごせるように。
そしてこのごろ思う。
公的な制度として、彼らの安心できる棲家を作ることについて。
病院ではなく。
ちゃんと笑って、過ごせる場所が日本には、もっともっと必要なのではないだろうか。
かつて、私も障害のある家族を持ち、幾つもの施設や病院を縮こまる心と伴に見て回った。
ぽっかりと心に穴の開くような場所もあった。
でも、そんな場所ではなく、、
アートがあったり、音楽があったり、庭があったり、お茶の時間があるような、絵本の中の世界のような。
かつて放課後デイサービスがなく、
保護者たちの動きで、今は全国に、放課後チャレンジドの過ごせる施設ができている。
そんな風に、大事に育てられたチャレンジドの子どもたちが、大人になって過ごせる場所が、
大事にされながら過ごす場所が。
風が渡り、樹々が揺れ、笑い声がする。
そう、こんな場所が。
一人、一人、大事な名前がある。
お母さんが、
何度も何度も呼んだ名前。
その名前を大事に大事に抱えていける、そんな場所が幾つも生まれますよう。
笑い声が繋がってゆく。
そんな未来を描いて。
揺れる風の音を聴きながら。